その1

メタボリックシンドロームが日本人を短命にする、健康寿命を短くする

小象の会 西船内科 篠宮正樹

ウエストサイズ物語

「心筋梗塞の予防はウエストサイズの測定からー。内臓脂肪のたまり具合を判断する診断基準を、日本動脈硬化学会や日本糖尿病学会など8学会がまとめた。男性は85センチ、女性は90センチ以上だと『要注意』だという。」 これは朝日新聞に今年の4月9日に掲載された記事です。肥満は、身体に脂肪が過剰に蓄積する状態ですが、皮下脂肪の蓄積に比べ、内臓周囲に脂肪がたまる内臓脂肪型の肥満では、血圧・血糖・中性脂肪などが高くなります。それぞれの程度は軽くても、複数重なると動脈硬化が進行して、心筋梗塞などにつながることが分かってきました。この病態は代謝症候群(メタボリックシンドローム:内臓脂肪症候群)と呼ばれます。内臓脂肪症候群を提唱した大阪大学の松澤佑次・住友病院長を中心として、メタボリックシンドロームの診断基準がまとまりました。これを表1に示します。

また共同通信が「中年男性3割が上半身肥満20代女性、やせ4人に1人03年国民健康・栄養調査」という記事で、国民健康・栄養調査の結果を報告しています。「調査は、03年11月に無作為抽出した全国の約1万1000人を対象に実施。身体計測への協力も求め、ウエストサイズは15歳以上の約6600人が協力した。身長、体重から算出した「BMI」という体格指標が25以上の「肥満」の人は、平均で男性の27%、女性の21%。日本肥満学会の基準はこうした人のうち、男性はウエスト85センチ以上、女性は90センチ以上を「上半身肥満の疑い」としており、当てはまる男性は全体の25%、女性は14%だった。上半身肥満の人は内臓脂肪がたまっている可能性が高く、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高いとされる。男性の30代(29%)、40代(32%)、50代(29%)、60代(28%)が基準に当てはまり、働き盛りの男性のリスクが目立った。厚労省生活習慣病対策室の担当者は『運動や食事に注意し、健康的な体形づくりを心掛けてほしい』としている。」とのことです。BMIについては表3をご覧下さい。

表1

表1
メタボリックシンドロームの診断基準(日本)

CTスキャンなどで、内臓脂肪面積測定を行いことが望ましい
ウエスト径は、立位・軽呼気時・臍レベルで測定する。脂肪蓄積が著明で、臍が下方に偏位している場合には肋骨下縁と前上腸骨棘の中点の高さで測定する。
メタボリックシンドロームと診断された場合、糖負荷試験が薦められるが、診断には必須ではない。
高TG血症・低HDL血症・高血圧・糖尿病に対する薬剤治療を受けている場合は、それぞれの項目に含める糖尿病、高コレステロール血症の存在はメタボリックシンドロームの診断から除外されない。

では肥満をはじめとする生活習慣が、どのくらい人の健康に関係するのでしょうか? これについては「人の死亡に関係する要素として、不健康な生活習慣病ないし行動様式によるものが50%と最大を占め、ついで環境と遺伝的原因がそれぞれ20%、不適切な保健医療システム10%」となっています。生活習慣の改善により寿命とくに健康寿命の短縮を食い止め無くてはなりません。代謝症候群の基盤となる肥満症の改善は容易ではありません。早期からの取り組みが必要なのです。