メタボリックシンドロームが日本人を短命にする、健康寿命を短くする
小象の会 西船内科 篠宮正樹
三つ子の習慣 百までも
日本では、若中年男性の肥満が年々増加しています。厚生労働省の10年ごとの循環器疾患基礎調査における日本の平均BMI(肥満度)の推移を下図に示します。1980年から2000年までで、男性はすべての年代で、BMIが増加しています。一方若年女性のBMIが減少しています。これはこれで将来の不妊や骨粗鬆症などの進展が心配されます。私たちの船橋でも、公表されている資料に基づき算出した、基本健康診査で肥満と判定された人の割合(肥満度ではありません)を見ると、9年間でも男性で肥満者が増加し、女性でも漸増していました。
高血圧・高脂血症は、近年の薬の発達により、ある程度コントロールが可能となりました。一方糖尿病は一度発症すると、発症当初は症状が乏しいので治療に積極的になれないことも手伝って、その治療は困難を極め、多大の労苦を強いられます。肥満による高脂血症・高血圧・糖尿病は、肥満の解消で改善します。しかし肥満の解消は実に困難です。小児期から肥満にならないような地道なしかし積極的な取り組みが必要です。ところが現代は、少子化のなかで、地域ぐるみの子育てが不可能になってきました。また食の偏りで、飽食から崩食そして呆食の時代となってしまいました。専門知識と経験を活かすボランティアとしての市民への啓発活動はこれからの医療者の進む道でのひとつだと考えます。私は内科医ですが、すべての医療分野の人達とともに、小児やお母さんや先生方に対する生活習慣病予防の啓発活動に取り組みたいと思っています。そこで、金塚 東・篠宮正樹・栗林伸一の3名が発起人となって、NPO「生活習慣病防止に取り組む市民と医療者の会(愛称:小象の会)」の設立を申請しました。医療者には、このような活動に参加して戴きたく、また市民の皆様にはこのような場を通じて正しい医療情報を得て欲しいと思います。
まとめ
- 4人にひとりはメタボリックシンドローム
- 内臓脂肪の蓄積が原因である
- 動脈硬化性疾患(心筋梗塞・脳梗塞)の重要な基礎疾患
- 高率に糖尿病を発症
- 5%の体重減少でウエスト・血圧・コレステロール・中性脂肪などが改善する。それを新たな動機づけとして、リバウンドを阻止する。内臓脂肪は、たまりやすいがへりやすい
- 肥満であり続ける理由(カロリーに無頓着であるだけなのか? ストレスが大きく過食が止まらないのか?)に対し、また減量のストレスに対し心理的サポートが重要
- 早期診断と治療 あるいはメタボリックシンドローム予備軍である小児に対しての「健全な食生活や規則正しい睡眠が必要」などの指導・啓発が動脈硬化を防ぐ
参考文献
瀧井宏臣: 「こともたちのライフハザード」 岩波書店 東京 2004年
特集「Metabolic syndrome -診断と治療の進歩-」 日本内科学会誌 93巻4号 2004年